「第10回嚥下食メニューコンテスト」決勝審査会を実施しました。
この度、「一般社団法人日本医療福祉セントラルキッチン協会」との共催により、「~地域の伝統食からオードブル・デザートまで~第10回『嚥下食メニューコンテスト』」を実施しました。
第10回を迎えた今回は、感染防止対策を実施し3年ぶりとなる展示会の特設会場で決勝審査会を行うなど、コロナウイルス感染症拡大以前の流れをベースに計画・実施しました。感染症対策への対応にも追われ多忙を極める医療・福祉給食の現場が多いにもかかわらず、全国から54件の力作が届きました。特に上位にランクインした作品は、アイデアや見た目、栄養面、食べ手への工夫など、内容的にハイレベルな作品が多く、一次審査では決勝審査に進出する5作品への絞り込みが、大変な難作業となりました。
決勝審査会は、2023年2月9日(木)「メディケアフーズ展2023」内のセミナー第2会場で実施。「メディケアフーズ展2023」の会場内は、昨年・一昨年に比べて来場者数も増えて賑わいを感じられるなか、決勝審査会のスタートから表彰式が終了するまで、医療・福祉給食の関係者を中心に、嚥下食・介護食に興味をお持ちのお客さまに多数観覧いただくことができました。
主催者代表挨拶
審査風景
まず、主催者を代表して一般社団法人日本医療福祉セントラルキッチン協会の越知理事が代表挨拶を行い、審査会がスタート。決勝審査会にノミネートされた5チームが、ステージにセットされたIH調理器やスチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、ミキサー類などを使って20分間の実演プレゼンテーションを行い、出来上がった料理を金谷・片岡の両審査員が試食・採点する方法で進められました。
1組目は、たまねぎ、ウニ、海苔、鰆といった淡路島の特産品をふんだんに活用した「淡路島 夏の前菜4種 ~淡路の海を眺めながら~」を特設ステージで調理いただきました。途中、調理作業をモニターで中継しながら、金谷氏から各チームの作品と決勝審査進出のポイントを解説。続いてメニュー開発の経緯や特徴、調理のポイント等のインタビューを行いました。
コンフォートヒルズ六甲・
セコムフォートウエスト株式会社
太田 祐一氏・山本 俊隆氏
淡路島 夏の前菜4種
~淡路の海を眺めながら~
調理審査風景
調理審査風景
続いて、2組目は牡蠣の風味が香る鯛のムース、マシュマロのようなギモーヴ、つぶつぶとしたパール状のゼリーの3つの異なる食感が味わえる「鯛と柑橘の愛媛ブラボー ~牡蠣風グラチネとみかんのギモーヴ~」でした。食中毒のリスクを回避するために愛媛県産の鯛を使って牡蠣を表現した見た目にも美しいひと皿は、嚥下食という概念を飛び越えた画期的な仕上がりとなりました。
医療法人 ゆうの森
西村 健太郎氏・永井 慶子氏
鯛と柑橘の愛媛ブラボー ~牡蠣風グラチネとみかんのギモーヴ~
調理審査風景
調理審査風景
3組目は、クリスマスの食事をイメージした「鴨肉のムース 赤ワインソースのジュレ ビーツのピュレを添えて」が披露されました。嚥下食に用いるには珍しい鴨肉をメインに、真空調理を活用してビーツをピュレ状にした鮮やかな色合いが、会場の観覧者を魅了。交互嚥下に加えて抗酸化作用、健康維持、疲労回復などに配慮した素材をふんだんに使用しながらも再現性にこだわったひと皿は、高齢者の食事に求められる要素が詰め込まれた圧巻のひと品となりました。
有限会社 月翔 嚥下食工房 七日屋
牟田園 満佐子氏・松井 由理氏
鴨肉のムース 赤ワインソースのジュレ ビーツのピュレを添えて
調理審査風景
調理審査風景
4組目は、50種類以上の材料を使い7品目をラインアップした「からだが喜ぶ、養生食」が登場。色味が鮮やかなアボカドムースの卵黄のせをはじめ、栄養価満点の食事をとろみ剤を使わずに作るなど、ご自身が培ってきた経験と技術を惜しみなく披露されました。
セントケア東京(株)アルタクラッセ二子玉川
吉野 栄里子氏・村田 幸江氏
からだが喜ぶ、養生食
調理審査風景
調理審査風景
最後に、宮城県石巻市の名産の桃生茶(ものうちゃ)や蔵王町産のチーズを使用したデザート「北限の緑と大自然の白 味わいお茶チーズケーキ」が調理審査に臨みました。経管栄養状態で入院してこられる患者さん多い現状から、少量高栄養なデザートを開発。火を使うことなく調理できる簡便さと5層仕立ての変化ある味覚と食感が楽しめる嚥下食でした。
医療法人社団 慈誠会前野病附属介護医療院
関 千枝氏・山村 千恵氏
北限の緑と大自然の白 味わいお茶チーズケーキ
調理審査風景
調理審査風景
観覧者の皆さまは、金谷審査員長の解説や出場者の説明に耳を傾けつつ、各出場者が披露する斬新なテクニックやアイデア満載の調理手法に驚き興味をもたれた様子で、各出場者の調理審査の合間には、展示された嚥下食メニューの写真を撮るなど、完成度の高い美しく美味しそうな嚥下食メニューに感心されていらっしゃいました。
調理審査を終えた両審査員は、別室に移動してそれぞれの専門的立場からの評点を中心に協議を行い、グランプリ・準グランプリ・優秀賞の選考に取り組まれ、書類審査での評価点と決勝審査会での内容を踏まえた総合的な観点から、各賞を選定されました。
審査時間を利用して、会場では昨年度最優秀グランプリを受賞された崇徳厚生事業団 長岡福祉協会 障害者支援施設 桐樹園 栄養科の調理師 水澤慶太氏による記念セミナー「嚥下食の取組み~コンテストを通して得られるモノ~」を実施。水澤氏が嚥下食に出会ったきっかけから、技術レベルの進化やチームとしての成長の歩み、さらには嚥下食メニューコンテストへの取組みと活用方法までを、現場の目線で分かり易く紹介してくださいました。ご自身の経験を包み隠さず公開しながら分かり易く解説してくださった講師のお話しに、聴講者の皆さまは、共感しながら熱心に耳を傾けておられました。
水澤 慶太氏
最後に、審査結果発表と表彰式が行われ、最優秀グランプリに輝いた有限会社 月翔 嚥下食工房 七日屋の牟田園 満佐子氏を筆頭に、表彰状と楯・賞金が手渡された後、片岡氏、金谷氏の順に講評が行われ、決勝審査会はつつがなく終了しました。
審査結果発表
最優秀グランプリ発表
表彰状授与
表彰楯授与
賞金授与
副賞(ブリクサー)授与
片岡護氏講評
金谷節子氏講評
最優秀グランプリ
有限会社月翔 嚥下食工房七日屋 様
最優秀グランプリ受賞インタビュー
準グランプリ
医療法人ゆうの森 様
集合写真
表彰楯&目録
会場風景
今回は、最優秀ブランプリを獲得した交互嚥下への対応を意図としたメニューをはじめ、地域の食材や特産品を活用しながら、おいしさへのこだわりや食べ手への配慮、栄養価等が考慮された多彩なメニューが軒を連ね、嚥下食の着実な進化と進歩を実感できる貴重な機会となりました。
最後に、当コンテストに応募くださった多くの皆さま、運営をサポートしてくださったスタッフの方々、さらには協賛・協力・後援いただきました各企業さま等、関係各位に心から感謝を申し上げ、ご報告とさせていただきます。
■審査結果
<最優秀グランプリ>
「鴨肉のムース 赤ワインソースのジュレ ビーツのピュレを添えて」
有限会社 月翔 嚥下食工房 七日屋
牟田園 満佐子氏
<準グランプリ>
「鯛と柑橘の愛媛ブラボー~牡蠣風グラチネとみかんのギモーヴ~」
医療法人 ゆうの森
西村 健太郎氏
<優秀賞>
「淡路島 夏の前菜4種~淡路の海を眺めながら~」
コンフォートヒルズ六甲・セコムフォートウエスト株式会社
太田 祐一氏
<優秀賞>
「からだが喜ぶ、養生食」
セントケア東京(株)アルタクラッセ二子玉川
吉野 栄里子氏
<優秀賞>
「北限の緑と大自然の白 味わいお茶チーズケーキ」
医療法人社団慈誠会 慈誠会前野病院附属介護医療院
関 千枝氏