いま、なぜ嚥下食が必要なのか2.増えつづける摂食・嚥下障がい者

高齢化先進国といわれるわが国では、総人口に占める65歳以上の割合が23.1%に達しています。(総務省「人口推計」平成22年度版より)中でも深刻なのが、75歳以上の後期高齢者の急増で、平成21年度から22年度の1年間に約60万人も増えており、今後更に増加が進むものと予測されています。(図2-1参照)

図2-1 平成22年度総務省「人口推計」

平成22年度総務省「人口推計」

こうした現象は、社会のさまざまな側面に多大な影響を及ぼし始めていますが、深刻な課題の1つが、療養病床の入院患者や特別養護老人ホーム・老人保健施設の入所者の4割以上が抱えている摂食・嚥下障がいへの対応です。
摂食・嚥下とは、口に入れた食べ物を歯や舌で咀嚼し、飲み込みやすい塊(食塊)を形成した後、舌の運動によって咽頭へ送り込み、嚥下反射で食道へ、食道のぜん動により胃へと送る5段階の過程を指します。(図2-2参照)
これらの一連の動きは、一瞬(1秒以内)のうちに起こるものですが、このいずれかの段階もしくは複数の段階で何らかの問題が発生する状態が摂食・嚥下機能障がいです。

図2-2 摂食・嚥下の過程(5期)

摂食・嚥下の過程(5期)

摂食・嚥下障がいによって引き起こされる主な問題として、下記の3つが挙げられます。(図2-3参照)

  1. ①QOLの低下
  2. ②低栄養・脱水症
  3. ③誤嚥・窒息

図2-3 摂食・嚥下障がいによる主な問題