私は長い間嚥下食を研究してきましたが、残念ながら嚥下食って飲み込むだけで、咀嚼がないんですよね。本来咀嚼がないと満足できない。
だから、「8020」にこだわって痛い歯を持ち続けておくのではなくて、歯科医の先生にお願いして良い義歯を作っていただくことが大切だと思うんです。
ボロボロになった歯を頑張って持っていたって、そこから病原菌が出てくるだけだし、口臭も強くなる。その辺りについて、米山先生いかがでしょうか。
そうですね。できれば健康保険が使える60歳・65歳までに歯科医院に行って、一度口の中を見直すべきなんですね。確かに歯は一本でも多い方が良い。それはそうなんですが、噛んだら痛くて顔をしかめるようだと、生活面に支障が出るし、口臭も酷くなる。
菌血症を起こして、細菌が血液の中を回っているなんてことになりかねない。
義歯は大事なんですよね。やはり歯科医は義歯を作ってより良く食べられるようにしないといけない。
それと先生、高齢者にとっては口腔ケアがとても大切ですよね。
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すると、後者のグループの人たちは、3ヶ月後には歯肉炎が治り、口臭も少なくなって職員の方々にとても喜ばれました。さらに、笑顔が増えて、食事量も増えた。口がきれいになると味覚がシャープになるんでしょうね。
また、未来プロジェクトというものがあって、八王子の施設で口腔機能が栄養に与える影響を研究しました。調査対象は、それほど介護度の高くない要支援介護の方なんですが、こちらも2つのグループを設けて、片方のグループには高カロリー・高タンパクの食事を提供した。もう一方のグループには、同じ食事を提供しながら、それにプラスして一週間に1回か2回口腔ケアの体操を実施しました。そしてアルブミン値を調べたところ、口の機能を高めると明らかにアルブミン値が大きくなることが分かったんです。おそらく栄養成分の吸収率が上がるのではないかと思われます。だから、栄養士さんたちと一番近いところに実は歯科医がいるのかもしれませんね。